間取り図を見ている人は、たいてい引っ越しの少し手前にいます。部屋が決まったら、次に決めるのが引越し業者です。
ここで最初に知っておいて欲しいことが一つあります。引っ越しには、定価がありません。同じ荷物、同じ距離でも、頼み方と業者と日によって、金額は何倍も変わります。だから「どこがいいか」を探す前に、「自分にはどの頼み方が合うか」と「頼む前に何をするか」を先に決めた方が、結果的に安く、楽に終わります。
前半は一般論として、引っ越しの4つの方法と、安くする4つのポイントを整理します。後半で、私が愛媛から東京へ引っ越したときの話と、今回あらためて一括見積もりを試した結果を書きます。
引っ越しに定価がない理由
引っ越し代は、トラックと作業員を、その日その時間に確保する費用です。トラックが空いている日は安く、埋まっている日は高い。3月と4月は誰もが動くので高く、平日の午後は空きやすいので安い。
つまり見積もりは、その業者の「今の空き具合」に対する言い値です。比べなければ、自分が高い方の言い値を受け取ったかどうかも分かりません。1社で決めることが悪いのではなく、「比べずに1社で決める」と、高いか安いかを知らないまま払うことになる、ということです。
引っ越しの方法は4つある
「引っ越し=引っ越し業者に頼む」と思いがちですが、頼み方は4つあります。荷物の量と距離で、合う方法が変わります。
| 方法 | 向いている人 | 弱点 |
| ① 引っ越し専門業者 | 長距離・荷物が多い・高価なものがある | 高い |
| ② 単身向けサービス | 単身・段ボール中心・壊れにくい荷物 | 梱包は自分・補償は要確認 |
| ③ 個人・小規模の業者(くらしのマーケットなど) | 短距離・荷物少なめ・掃除なども頼みたい | 質にばらつき・補償なし・長距離は高くなることも |
| ④ 自分で運ぶ | 短距離・極端に少ない・車と手伝いがある | 労力・大きいものは無理 |
① 引っ越し専門業者:時間を買う
荷造りから荷解き、家具の設置まで頼める。業者によっては荷物の補償も手厚い。その代わり、4つの中で一番高い。
向いているのは、長距離で、荷物が多く、壊れたら困るものがある人。「自分の時間を使わずに、まるごと任せたい」という人が払う金額だと思っておくと、高さに納得がいきます。
② 単身向けサービス:ボックスに入る分は同じ料金
クロネコヤマト(現:アートセッティングデリバリー)、日本通運、ケーエー引越センターなど、主に運送を本業にしている会社の単身向けサービスです。専用のボックスに荷物を載せて運ぶ仕組み(ケーエー引越センターは標準:1.5トン ロング車に入る分)で、ボックスに入る分は同じ料金。段ボールが8箱でも12箱でも、1本に収まれば金額は変わりません。
だから目標がはっきりします。「ボックスに入る量まで減らす」。荷物を減らす作業に、具体的なゴールができます。
弱点は、梱包を自分でやること。それと、あくまで「運送」なので、荷物の補償がない、または限られていることがある。壊れたら困るものは、自分で持っていく前提で考えます。
③ 個人・小規模の業者:安く、柔軟に
くらしのマーケットやジモティのようなサービスで、個人や小さな業者に直接頼む方法です。業者ごとの料金と口コミが一覧で並んでいて、自分で選んで予約する。見積もりを「もらう」のではなく、値段を「見て選ぶ」ので、電話は来ません。
運送業者よりさらに安いことが多く、追加料金はかかるものの、旧居の掃除や不用品の処分まで一緒に頼めるのが強みです。もともと大手で働いていた人や、今も大手の下請けをしている人も多いので、質が低いとは限りません。
弱点は、業者ごとに差があること。荷物の補償がかけられないこと。長距離だと、かえって高くなることがあること。口コミの数と内容を見て選ぶのが前提です。それと、お金をもらって荷物を運ぶには運送業の許可が要るので、頼む前に「許可を受けている業者か」を確認しておくと安心です。
④ 自分で運ぶ:交通費だけで済むが、限界がある
レンタカーや自家用車で、自分で運ぶ。費用はほぼガソリン代とレンタカー代だけで、好きな日に動ける。
ただし、全部自分でやる。冷蔵庫や洗濯機は一人では運べないので、車と、手伝ってくれる人の両方が必要です。短距離で、荷物が極端に少なくて、協力者がいる。この3つがそろう人だけの方法です。
業者を決める前にやること:荷物を減らす
4つの方法を見て気づくと思います。どの方法が合うかを決めているのは、業者ではなく、荷物の量です。
段ボールと数個の家電、家具なら②の単身ボックスで済む。そこに大型家具家電などが追加されると、③か①になる。冷蔵庫と洗濯機が加わると、トラックのサイズが上がる。荷物を減らすと、業者を比べる前に、そもそもの金額の桁が変わります。
だから、業者を探す前に、大きいものを1つずつ見て、こう問います。「これを運ぶ費用と、向こうで買い直す費用、どちらが安いか」。古いベッドを運ぶのに1万円かかるなら、処分して新しく買った方が安いことがある。古い冷蔵庫は、運んだ先の間取りに合わないこともある。
引越しついでに古いものから新しいものに心機一転するのもいいタイミングとも言えます。メルカリなどで売ると予想より高く売れることも。
処分は、自治体の粗大ごみが一番安い(数百円〜千円台)。業者に引き取ってもらうと、その何倍もかかります。引っ越しの日程が決まったら、まず粗大ごみの申し込みをする。ここが一番効く順番です。
間取り図を見ている今が、荷物を決めるタイミング
このブログで間取り図を読んでいるのは、まさにこの段階のためです。新しい部屋の寝室が6帖で壁が少ないなら、今のダブルベッドは入らない。運んでも置けないものを運ぶのが、一番もったいない。
内見のときに、窓の下端の高さ、壁の幅、廊下と玄関の幅を測っておく。持っていくものを決めるのは、業者に連絡する前。順番を逆にすると、見積もりを取ってから「やっぱり持っていかない」が起きて、二度手間になります。
引っ越し費用を安くする4つのポイント
ポイント1:大手だけを見ない
大手の引っ越し業者は、テレビCMや広告にお金をかけていて、その分は料金に入っています。一方、個人や小さな業者には、元大手の人や、大手の下請けをしている人も多い。作業の中身が同じで、広告費の分だけ安い、ということが普通に起きます。
「大手じゃないと不安」という気持ちは分かります。でも、その不安の何割かは、CMを見た回数で作られたものです。くらしのマーケットのように口コミが見える場所なら、不安の代わりに評価で判断できます。
ポイント2:相見積もりを取る
大手に頼むとしても、1社だけで即決しない。引っ越し業界では、最初の見積もりが最終的な金額よりかなり高い、ということが珍しくありません。業者は「他社にも見積もりを頼んでいるか」を気にしていて、比べていると分かると、金額が変わります。
家に来てもらう訪問見積もりなら、なるべく同じ日の近い時間帯に、続けて来てもらう。立ち会いの時間が短く済むうえに、業者の側も他社を意識した金額を最初から出しやすくなります。
一括見積もりの利点と、最大の欠点
一括見積もりサイトは、荷物と日程を1回入力すると、10〜20社の見積もりが出てきます。1社ずつ問い合わせる手間がなく、同じ条件で並ぶので、差がはっきり見える。
ただし、最大の欠点を先に書いておきます。電話番号の入力が必須のサイトでは、申し込んだ直後から複数の業者から電話がかかってきます。「安くなるが、電話が来る」を知った上で使うか、電話が来ない方法を選ぶか、どちらかです。
電話が来ない比べ方
引越し侍は、電話番号を入れずに、ネットだけでざっくりした相見積もりが取れます。私が実際に試したところ、10〜20社の候補と金額が出て、その後の電話もメールも0件でした(後半で詳しく書きます)。「まず金額の幅だけ知りたい」「電話は嫌だ」という人は、ここから始めるのが一番手間が少ないと思います。
入力する前に用意しておく3つ
入力は5分ほどで終わります。途中で止まらないために、先に決めておくのは3つ。今の住所と新しい住所(建物の階数と、エレベーターの有無まで)。希望日と、動かせる幅(「この週ならどこでも」と言えると安くなる)。荷物のリスト(段ボールの数の見込みと、大きいものの一覧)。荷物のリストは、前の章で「持っていくもの」を決めていれば、もうできています。
追加料金がかかりやすい条件
見積もりの金額が後から上がりやすいのは、この3つ。県外への長距離。エレベーターがない建物。道幅が狭くて、建物の前までトラックが入れない。自分の条件に当てはまるなら、最初に伝えておく方が、あとで揉めません。
安くする努力は大事ですが、値切りすぎると、作業する人の負担にしわ寄せがいきます。比べるのは「言い値を避けるため」で、「限界まで削るため」ではない、と私は思っています。
ポイント3:安い時期と時間帯を選ぶ
高くなる時期は決まっています。3月中旬〜4月上旬、年末、ゴールデンウィーク、夏休み、冬休み。この時期は人手が足りず、相場の1.5〜2倍になることもあります。日程を動かせるなら、ここを外すのが一番大きい。動かせないなら、早めに押さえる。
時間帯も同じです。「午前中に来てほしい」は高く、「その日のどこかでいい」(フリー便)は安い。早朝や夜など、業者の空き時間で作業できるなら、さらに下がることもある。時間を業者に任せると、その分が値引きになります。
もうひとつ、同じ金額でも「ついてくるもの」に差があります。段ボールが無料か、ハンガーボックスを貸してくれるか。金額だけでなく、無料サービスも並べて比べる。
ポイント4:自分でできることは自分でやる
荷造り、不用品の処分、足りない段ボールの手配。この3つは、業者に頼むと料金に乗り、自分でやれば消えます。金額としては他の3つより小さいですが、荷造りを自分でやると、ついでに「持っていかないもの」が見つかるので、荷物を減らす作業と一体になります。
荷造りを友人に手伝ってもらって、業者に払うはずだったお金でごちそうする、という使い方もあります。出ていく金額が同じでも、満足度が違う。
私の場合:愛媛から東京へ、段ボール10箱
ここからは私の話です。
2024年3月、愛媛から東京へ引っ越しました。荷物は段ボールの大中小で20箱以上、大きな家具と家電はその時はなし。愛媛の居住地を残したまま東京に引っ越す予定だったため、運ぶものは段ボールだけで済みました。
軽く相見積もりを取って、クロネコヤマトの単身引っ越し(現:アートセッティングデリバリー)が一番安かったので、そこに決めました。4つの方法でいう②です。料金は正直に言うと正確には覚えていなくて、5〜7万円くらいだったと思います。3月の繁忙期に、愛媛から東京という距離で、この金額。荷物が段ボールだけで、ボックスに収まったから成り立った数字だと思っています。
良かった点は、安かったこと。困った点は、梱包を全部自分でやること。ただ、段ボールだけなら1日で終わる量なので、困ったというほどではありませんでした。
今回、引越し侍を試してみた
この記事を書くにあたって、引越し侍のネット見積もりを、単身の条件(愛媛〜東京)で実際に試しました。
出てきた候補は4社。金額の幅は、同じ条件で大体3万円の差がありました。一番差が大きなところでは12万円以上もの差がありました。単身の荷物でも、業者でこれだけ変わる。「引っ越しに定価がない」は、単身でも同じでした。
電話番号を入力していないので、その後の電話は0件、メールも0件。他の一括見積もりサイトも見ましたが、そちらは電話番号の入力が必須でした。
私ならこう決める
私は、毎日使うものには費用をかけて、たまにしか使わないものは削る、という考え方で暮らしています。引っ越しは数年に1回。だから、削る側です。
削り方は、業者を値切ることではなく、荷物を減らすこと。荷物が段ボールだけになれば、単身のボックスで済んで、比べる手間も消えます。私が愛媛から東京へ5万円くらいで動けたのは、業者選びがうまかったからではなく、運ぶものが少なかったからです。
そのうえで、今の私が同じ状況で決めるなら、こうします。
- 荷物が段ボールだけまたは+数個の家具家電 → ヤマトなどの単身ボックス。
- 大きいものが1〜2点だけで、短距離 → くらしのマーケットで、料金と口コミを見て直接予約する
- 家族の荷物、大きい家具家電が複数、高額なものがある、または長距離 → 引越し侍で、電話なしで金額の幅を見る。そのあとで、気に入った2〜3社にだけ直接連絡する
- どの場合も、その前に粗大ごみの申し込みをする
まとめ
- 引っ越しに定価はない。同じ荷物でも、頼み方と業者と日で何倍も変わる
- 方法は4つ。専門業者(時間を買う)・運送業者の単身ボックス(入る分は同一料金)・個人や小規模の業者(安く柔軟、口コミで選ぶ)・自分で運ぶ(短距離で協力者がいる人)
- どの方法になるかは荷物の量で決まる。だから業者を決める前に荷物を減らす。運ぶか買い直すかを1つずつ決めて、粗大ごみを先に申し込む
- 安くする4つ:大手だけを見ない・相見積もり・安い時期と時間帯・自分でできることはやる
- 電話が嫌なら、電話番号なしで比べられる引越し侍か、料金と口コミを見て選ぶくらしのマーケット
引っ越し費用と一緒に考えたい、初期費用と家賃の中身については、こちらで書きました。



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